コラム
公開 2024.09.23

単体6895_新規_電波法とは?違反時の罰則や主な規制内容を弁護士がわかりやすく解説

電波法は、電波の利用などについて定めた法律です。

電波法ではどのような規制が設けられているのでしょうか?
また、電波法に違反すると、どのような事態が生じる可能性があるのでしょうか?

今回は、電波法の概要や違反となる例、電波法に違反した場合の罰則などについて弁護士がくわしく解説します。

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電波法とは

電波法とは、電波の公平かつ能率的な利用を確保することにより、公共の福祉を増進することを目的とする法律です(電波法1条)。
電波は有限であるうえ、さまざまな重要な通信にも使用されています。

そうであるにも関わらず、電波が無秩序に利用されてしまうと混乱が生じかねません。
そこで、電波利用の適正化をはかるため、電波法では無線局の開設や運用などについてさまざまな規制を設けています。

電波法による主な規制内容

電波法では、どのような規制がされているのでしょうか?
ここでは、電波法による主な規制内容について概要を解説します。

無線局の開設に関する規制

1つ目は、無線局の開設に関する規制です。

電波法の規制により、無線局を開設するには、免許または登録を受けなければなりません。
無線局の開設のうち、公衆に与える影響が特に大きいものが免許制、影響が軽微であるものが登録制とされています。

それぞれの概要は次のとおりです。

免許制の無線局

無線局を開設するためには、原則として総務大臣の免許を受けなければなりません(同4条)。
ただし、次のいずれかに該当する場合には、例外的に免許は不要となります。

  1. 発射する電波が著しく微弱な無線局で、総務省令で定めるもの
  2. 26.9MHから27.2MHzまでの周波数の電波を使用し、かつ、空中線電力が0.5W以下である無線局のうち総務省令で定めるものであって、適合表示無線設備のみを使用するもの
  3. 空中線電力が1W以下である無線局のうち総務省令で定めるものであって、一定の機能を有することにより他の無線局の運用を阻害するような混信その他の妨害を与えないように運用することができるもののうち、適合表示無線設備のみを使用するもの
  4. 登録制の対象である無線局

これらに該当しないにもかかわらず免許を受けることなく無線局を開設すれば、電波法違反となり、罰則の適用対象となります。

登録制の無線局

次のすべてを満たす無線局を開設しようとする際は、総務大臣の登録を受けなければなりません(同27条の21)。

  1. 電波を発射しようとすること
  2. 他の無線局の運用を阻害するような混信その他の妨害を与えないように運用できる無線局のうち総務省令で定めるものであること(その電波と周波数を同じくする電波を受信することにより一定の時間自己の電波を発射しないことを確保する機能を有する無線局など)
  3. 適合表示無線設備のみを使用すること
  4. 総務省令で定める区域内に開設しようとすること

登録を受けずにこれに該当する無線局を開設すると、電波法違反となります。

無線設備に関する規制

2つ目は、無線設備に関する規制です。
無線設備が適切に運用されるよう、次の規制が設けられています。
ここでは、主に無線設備の「モノ」に着目した規制がされています。

  • 電波の質
  • 受信設備の条件
  • 安全施設
  • 周波数測定装置の備付け
  • 船舶局への計器と予備品の備付け
  • 義務船舶局に備えるべき無線設備
  • 義務航空機局の条件
  • 人工衛星局の条件
  • 無線設備の機器の検定
  • 無線設備に関するその他の技術基準

電波の質

送信設備に使用する電波の周波数の偏差や幅、高調波の強度等電波の質は、総務省令による定めに適合させなければなりません(同28条)。

受信設備の条件

受信設備により副次的に発せられる電波または高周波電流が、総務省令で定める限度をこえて他の無線設備の機能に支障を与えるものであってはなりません(同29条)。

安全施設

無線設備には、人体に危害を及ぼしたり物件に損傷を与えたりすることがないように、総務省令で定める施設を設けなければなりません(同30条)。

周波数測定装置の備付け

一定の送信設備には、その誤差が使用周波数の許容偏差2分の1以下である周波数測定装置を備えつけなければなりません(同31条)。

船舶局への計器と予備品の備付け

船舶局とは、船舶の無線局のうち、「無線設備が遭難自動通報設備またはレーダーのみのもの」以外のものです(同6条3項)。
船舶局の無線設備には、その操作のために必要な計器と予備品のうち、総務省令で定めるものを備えつけなければなりません(同32条)。

義務船舶局に備えるべき無線設備

義務船舶局とは、船舶安全法で定められた一定の船舶の船舶局です(同13条2項)。
この義務船舶局の無線設備には、総務省令で定める船舶や航行区域の区分に応じ、送信設備と受信設備の機器、遭難自動通報設備の機器、船舶の航行の安全に関する情報を受信するための機器その他の総務省令で定める機器を備えなければなりません(同33条)。

また、予備設備を備えることなど一定の措置を講じることも必要です(同34条、35条)。

義務航空機局の条件

義務航空機局とは、航空法の規定により無線設備を設置しなければならない航空機の航空機局です(同13条2項)。
義務航空機局の送信設備は、総務省令で定める有効通達距離をもつものでなければなりません(同36条)。

人工衛星局の条件

人工衛星局とは、人工衛星の無線局です(同6条1項4号)。
人工衛星局の無線設備は、遠隔操作により電波の発射を直ちに停止できるものでなければなりません(同36条の2)。
また、原則として、無線設備の設置場所を遠隔操作により変更できることが求められます。

無線設備の機器の検定

周波数測定装置や船舶に備えるべきレーダー、船舶に施設する救命用の無線設備機器など一定の無線設備機器は、原則として、その型式について総務大臣による検定に合格したものでなければ施設してはなりません(同37条)。
ただし、一定の型式検定に合格している場合にはこの限りではないとされています。

無線設備に関するその他の技術基準

無線設備(放送の受信のみを目的とするものを除く)は、その他総務省令で定める技術基準に適合するものでなければなりません(同38条)。

無線従事者に関する規制

3つ目は、無線従事者に関する規制です。
こちらは、無線設備のうち、「人」に着目した規制です。

電波法では、無線設備の操作を単独で行うことができるのは、原則として無線従事者のみとされています。
それ以外の者が無線設備を操作するには、主任無線従事者として届け出た者による監督を受けなければ、無線設備の捜査を行うことができません(同39条)。

また、無線従事者となるためには従事する無線設備に応じた資格を取得したうえで総務大臣の免許を受ける必要があります(同40条、41条)。

無線局運用に関する規制

4つ目は、無線局運用に関する規制です。
無線局の運用に関する主な規制内容は次のとおりです。

  • 目的外使用の禁止
  • 免許状・登録状の記載遵守
  • 空中線電力の規制
  • 運用許容時間の遵守
  • 混線等の防止
  • 疑似空中線回路の使用
  • 秘密保護
  • 時計・業務書類等の備付け
  • 通信方法等

目的外使用の禁止

無線局は、免許状に記載された目的・通信の相手方・通信事項の範囲を超えて運用してはなりません(同52条)。
ただし、次の例外が定められています。

  1. 一定の遭難通信
  2. 一定の緊急通信
  3. 一定の安全通信
  4. 一定の非常通信
  5. 放送の受信
  6. その他総務省令で定める通信

免許状・登録状の記載遵守

無線局の運用にあたっては、原則として、次の事項についてその無線局の免許状または登録状に記載された内容によらなければなりません(同53条)。

  • 無線設備の設置場所
  • 識別信号
  • 電波の型式
  • 周波数

空中線電力の規制

無線局を運用する場合、空中線電力は原則として次の要件を満たすものでなければなりません(同54条)。

  1. 免許状等に記載されたものの範囲内であること
  2. 通信を行うため必要最小のものであること

運用許容時間の遵守

無線局は、免許状に記載された運用許容時間内でなければ運用してはなりません(同55条)。

混線等の防止

無線局は、他の無線局や一定の受信設備の運用を阻害するような混信、その他の妨害を与えないように運用しなければなりません(同56条)。

疑似空中線回路の使用

無線局は、次に掲げる場合、なるべく擬似空中線回路を使用しなければなりません(同57条)。

  1. 無線設備の機器の試験または調整を行うために運用するとき
  2. 実験等無線局を運用するとき

秘密保護

何人も、法律に別段の定めがある場合を除き、特定の相手方に対して行われる無線通信を傍受してその存在や内容を漏らしたり窃用したりしてはなりません(同59条)。
この規定の主語は「何人も」とされており、無線局開設者のみならず、すべての人が対象となる点に注意が必要です。

時計・業務書類等の備付け

無線局には、正確な時計と無線業務日誌、総務省令で定める書類を備え付けなければなりません(同60条)。
ただし、総務省令で定める一定の無線局は、これらの全部または一部を省略できます。

通信方法等

次の内容など、無線設備の機能を維持するために必要な事項の細目は総務省令で定められます(同61条)。

  • 無線局の呼出しまたは応答の方法
  • その他の通信方法
  • 時刻の照合
  • 救命艇の無線設備と方位測定装置の調整

電波法に違反するとどうなる?

電波法に違反した場合、どのような事態が生じるのでしょうか?
ここでは、違反時に生じ得る事態について解説します。

罰則が適用される

電波法に違反した場合、刑事罰の適用対象となります。
電波法違反による主な刑事罰は、次のとおりです。

違反内容 刑事罰
遭難通信の取扱をしない行為・遭難通信の妨害(同105条) 1年以上の有期懲役
虚偽の通信を発する行為(同106条) 3年以下の懲役または150万円以下の罰金
日本国憲法・政府の暴力的破壊を主張する通信を発する行為(同107条) 5年以下の懲役または禁錮
わいせつな通信を発する行為(同108条) 2年以下の懲役または100万円以下の罰金
放送業務用の無線局や治安維持、気象業務などに必要な無線設備の破壊等(同108条の2) 5年以下の懲役または250万円以下の罰金
無線通信の秘密漏洩・窃用(同109条) 1年以下の懲役または50万円以下の罰金

(無線通信の業務に従事する者による場合は2年以下の懲役または100万円以下の罰金)

無免許・無登録での無線局開設(同110条) 1年以下の懲役または100万円以下の罰金

措置命令などの対象となる

電波法に違反した場合、措置命令などの対象となります。
たとえば、無線局が技術に適合していない場合には技術基準適合命令が出される可能性があるほか、違反時には無線局の運用停止命令が出される可能性があります(同71条の5など)。

免許や登録が取り消される

電波法への違反内容が重大である場合、 無線局の免許や登録が取り消されることがあります(同76条)。
また、無線従事者の免許が取り消される場合もあります(同79条)。

電波法に違反しないための対策

電波法に違反すると、罰則の適用対象となるなど甚大な影響が及ぶ可能性があります。
では、電波法に違反しないためにはどのような対策を講じればよいのでしょうか?
最後に、電波法違反を避けるための対策を2つ解説します。

弁護士へ相談する

1つ目は、迷った際に弁護士へ相談することです。

明らかな違反行為はともかく、電波法の遵守体制について判断に迷うこともあるでしょう。
その際は、無理に自社で判断せず、弁護士などの専門家へご相談ください。

弁護士へ相談することで、知らず知らずに違反状態となるリスクを避けることが可能となります。

電波法を理解し遵守する

2つ目は、電波法を理解することです。

電波法に違反しないため、まずは電波法や施行令、施行規則などを一読するとよいでしょう。
また、不法無線局については総務省も特設ページを設けているため、こちらも確認することをおすすめします。※1
これらを確認することで、「何をしてはいけないのか」、「何をすべきなのか」が明確となります。

とはいえ、自社でこれらを読み込み、理解することは容易ではありません。
お困りの際は、弁護士へご相談ください。

まとめ

電波法による規制内容の概要や、電波法に違反した場合の罰則などについて解説しました。

電波法とは、電波の公平かつ能率的な利用の確保などを目的とする法律です。
この目的を達成するため、無線局開設に関する登録・免許制度や、無線局の運用に関する規制などを設けています。

電波法に違反すると罰則の適用対象となるほか、措置命令の対象となったり免許が取り消されたりする可能性があります。
電波法に違反しないよう、あらかじめ規制内容を十分に理解しておきましょう。

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